乳癌はどの年代の女性にも起こる今とても多い癌です。
当院は駅前の小さなクリニックですので、スペースの問題上マンモグラフィー検査は受けられませんが、乳癌の専門医師(乳腺外科医)による外来診療をご利用頂けます(詳しい日程は最新のお知らせをご確認下さい)。
検診で異常を指摘された方や乳腺のしこりや痛みなど気になる症状がある方は、お気軽にご相談下さい。また、乳癌は家族内発生が多く見られる癌の一つです。血縁の方に乳癌を発症した方がいらっしゃる場合は、年に1度の検診をお勧めしています。
担当は亀田総合病院 乳腺科部長代理 越田佳朋(男性医師)になります。
いきなり乳腺外来を受診されることに抵抗がある場合は、まずは内科の女性医師にご相談下さい。
乳癌は、乳房のなかの母乳をつくるところ(小葉組織)や母乳を乳首まで運ぶ管(乳管組織)から発生する悪性腫瘍です。
乳がんの発生は、20歳過ぎから認められ30歳代ではさらに増え、40歳代から50歳代がピークです。
乳癌には、女性ホルモン(エストロゲン)が関与しており、初潮が早い、閉経が遅い、初産年齢が遅いまたは高齢で未産、など、エストロゲンにさらされる期間が長いことが乳癌にかかりやすい条件として挙げられます。また、高脂肪食、肥満なども関与し、これは特に閉経後の女性で、脂肪組織でエストロゲンが作られているためと考えられています。
もともと欧米に多かった乳癌が日本で増えているのは、女性の社会進出などのライフスタイルの変化や食生活の欧米化が、大きく影響しているためです。
しかしながら乳癌は、早期に発見して最善の治療を受ければ最も治りやすい癌の一つでもあります。 乳癌の発見には症状がなくても定期的な検診が重要です。 検診で精密検査が必要と言われた方に対しては正確な画像と病理診断をいます。
乳腺外来には、色々な症状を自覚された方が受診されます。 まず一番多いのが「乳房の痛み」です。「乳房の腫れ」「違和感」「硬い感じ」「しこり」「乳頭からの分泌物」などで、我々はそれらの主訴や年齢背景も考慮し、おおよその病態を予測することができます。 例えば、生理の周期に応じておこる乳房の腫れと痛み→→「乳腺症?」、 若い人でころころ動くくりっとしたしこり→→「線維腺腫?」のように・・。
乳房の検査の基本は、(1)視診・触診 (2)マンモグラフィ(乳房X線検査) (3)乳腺エコー検査の3つです。 3つの検査で、悪性が疑われるときには、まず最初に細い採血に使うときの針を病変部に刺し、細胞を採取し、顕微鏡で調べる「細胞診検査」を実施します。この「細胞診検査」は当クリニックでも検査いたします。 これらの結果を総合的に判断して、乳癌か否かを診断します。細胞診で不確実なときや、検査所見に食い違いがあり、最終診断に到達しない時は、太めの針で組織を取ってくる「針生検」や、しこりのみを全部とって調べる「摘出生検」という手術も実施することがあります。
大がかりな検査になる場合は、連携している亀田京橋クリニックや他の医療機関へ検査のご紹介をいたします。
乳癌を非浸潤癌(周りに広がっていない段階)でみつけ、適切な治療をすると100%の救命が期待できますから、これらの検査の技術や診断には、高度な精度管理が要求されます。またその発見動機の一つである「乳頭異常分泌」に対する正確なマネージメントも必要です。赤い血の混じったような分泌液が出るときは、癌の可能性があります。
乳癌の治療は、手術や放射線治療などの局所治療と、ホルモン療法や化学療法などの全身治療に大きく分けられます。病期やがん細胞そのものの種類に応じて最適の治療を組み合わせた治療法を考えていく必要があります。また乳癌の場合は特に、身体面だけではなく、心のサポートあるいは社会や家族、更に経済的な問題まで含めたトータルなケアが大切です。
具体的には、(1)手術(2)薬物療法(化学療法・内分泌療法・抗体療法)(3)放射線療法の大きな3つの柱があり、それらを組み合わせて、最大限の治療効果を得る工夫を行います。
手術で、乳房内の癌の病巣を取り除いてしまうことが基本です。
手術は、胸の筋肉(大胸筋)から大きく切除する方法から、できるだけ小さく切除して、乳房を残す方法へと変わってきています。現在は、乳房温存手術が、半数以上を占めるようになりました。
手術方法も様々で、提携している亀田総合病院では傷を最小限にした内視鏡手術を行っています。早期の癌に対しては、乳房自体に傷がつかない、腋窩のみに1つ小切開を置く方法(単孔式)での手術も行われています。
*乳がん手術で失った乳房を形成外科の手術で取り戻す・・・それが乳房再建です。再建された乳房は、厳密には元の乳房とは異なりますが、乳房が返ってくることにより得られる身体や心のQOLの向上が期待できます。乳がん手術の乳房切除による「喪失感」や「日常生活の不都合」、「乳房喪失による肉体的、精神的な苦痛」は、人それぞれで異なります。乳房切除後引っ込み思案になって外出も控えがちだった人が、乳房再建により積極的になるなど、乳房再建には言葉では伝えきれない精神面での大きな効果があるようです。
当院では亀田総合病院・亀田京橋クリニックを始め、最先端の乳癌治療を行っている医療機関と連携しております。より詳しい精密検査や手術などの治療が必要になった場合は、連携医療機関をすみやかに受診できるよう、ご紹介いたします。
乳癌の多くは、比較的早期から「全身病」としての性質を持ち、肺や肝臓・骨などの全身へ小さな微小転移を起こしています。つまり手術で、しこりやリンパ節を取るだけでは完治を望むのは難しく、その前後の行われる薬物療法が重要となります。
薬物療法において他の癌種と違い、特徴的なのは、内分泌療法です。乳がん細胞の発生、増殖に関わる女性ホルモン(エストロゲン)を作るのをおさえたり、エストロゲンの働きを抑えたりして、がん細胞の増殖を阻みます。飲み薬や注射があります。長いスパンで、治療が行なわれます。乳癌の60~70%は女性ホルモン感受性があり、その影響により癌細胞の増殖が促進されますので、それを防ぐのです。
乳がんは化学療法も比較的効果の示しやすい癌種なので、色々な薬と治療法が選択されます。抗がん剤で、繰り返しがん細胞を攻撃し死滅させる治療で、ほとんどの場合、化学療法は外来で行われます。効果と副作用、患者さんそれぞれの生活スタイルなども考え合わせてご相談しながら治療計画を立てます。なお、手術をする前に化学療法を行い(術前化学療法)腫瘍を小さくして、乳房温存術を行なうこともあります。最近では手術の前に行う、術前化学療法の重要性も増しています。
がん細胞に特有の性質をみつけ、そこを狙い撃ちする治療法です。乳がんにおける代表的な分子標的治療薬はトラスツズマブ(ハーセプチン)です。 トラスツズマブは、がんの増殖に必要な物質を取り込む受容体(HER2タンパク)を攻撃することでがんを抑えますので、HER2タンパクをもっている人にのみ効果があります。一般的に副作用は軽いですが、まれに重篤な副作用が起こることがあります。
乳房を残す手術では、乳房内に目に見えないほどの微小ながん細胞が残っているかもしれないので、放射線治療で、乳房に外から高エネルギーのX線をあて、がん細胞の増殖を抑えたり、死滅させたりします。また、再発・転移部位にも放射線照射が行なわれることがあります。
*癌の治療全般が、より体に負担を小さくする低侵襲(しんしゅう)の方向に向かっているように、乳癌でも切らない治療が研究・開発され始めています。それが、乳房にまったくメスを入れない治療法、非手術的療法です。
乳癌を凍結することで治療をしてしまう凍結療法の最大のメリットは、体への負担が少ないことです。メスを入れないので乳房に傷はつかず、局所麻酔を用い、日帰りで治療を行うことができます。また、凍結そのものに痛みを感じにくくする鎮痛作用があるので、ほかの治療よりはるかに痛みが軽くなります。
提携している亀田総合病院では「非切除凍結療法(非切除冷凍凝固療法)」をおこなってます。
検査の前には遺伝子カウンセリングを受けることがすすめられます。 カウンセリングは、本人・家族が「遺伝と病気」、「遺伝子検査」、「治療や健康管理」などについて正しい知識をもち、最もよい選択ができるようサポートすることを目的に行われます。
ご家族や血縁の方の中に乳癌にかかった人が複数いるタイプの乳癌を「家族性乳癌」と呼んでいます。そのうち、遺伝性かつ原因遺伝子がわかっている乳癌を特に「遺伝性乳癌・卵巣癌」と呼びます。「遺伝性乳癌・卵巣癌」は、BRCA1とBRCA2という遺伝子のどちらかに生まれつき変異があり、乳癌や卵巣癌のリスクが高くなる病気です。カウンセリングを受けたら遺伝子検査を受けなければいけないというわけではありません。検査を受ける場合と受けない場合、受けた結果どんな方法があるかなどについて十分な説明を受けたうえで、ご自分で決定して頂きます。
現在日本では、遺伝カウンセリングや遺伝子検査ができる施設は限られますが、着実に増えています。検査費用は保険適用ではないので20万~30万円程度です。
予防的治療については、卵巣癌ではすでに予防切除が行われています。これは、卵巣がんには今のところ有効な検診法がなく早期発見が難しいからです。 当院と連携している亀田京橋クリニックにて遺伝子外来を開設してます(四元先生)。必要な方、ご心配な方はご相談下さい。当院の乳癌専門外来から直接ご紹介いたします。