2023年も4ヶ月が過ぎようとしていますが、今年は“肥満症”の治療が大きく前進する年になりそうです。
今回は、肥満症の治療について取り上げてみたいと思います。
肥満とは、体重(kg)/身長(m)2で定義される体格指数(BMI)が25以上であることを指します。肥満症は、糖尿病・高血圧症などの生活習慣病の発症率が高まるだけでなく、心筋梗塞・脳梗塞などの血管障害、睡眠時無呼吸症候群などの呼吸器疾患、変形性関節症などの整形外科疾患のリスクにもなるため、これら健康障害を防ぐために治療≒減量が必要になります。
そんな中、肥満症の改善に糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬に注目が集まっています。
GLP-1受容体作動薬は、GLP-1というホルモンが脳に働きかけて食欲抑制作用を発揮するため、減量効果を有します。現状2型糖尿病の治療においてのみ保険適用があり、今までは注射製剤しか選択することができませんでした。しかし、2021年には飲み薬として経口セマグルチド(リベルサス®)が登場し使用のハードルが下がったため、糖尿病患者さんの減量サポートに大きく貢献しています。
また、今年3月にGLP-1受容体作動薬の週1回注射製剤(ウゴービ®皮下注)が肥満症治療薬として承認され、糖尿病に罹患していなくてもGLP-1受容体作動薬を使える日がこれからやってきそうです。更に、GIP・GLP-1の2つの受容体に作用するGIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチド(マンジャロ®)は、2型糖尿病の注射製剤として近々使用が可能になります。従来のGLP-1受容体作動薬の注射製剤と比較しても強力な減量効果を発揮することが示されているので、これまで減量がうまく進まなかった糖尿病患者さんの肥満症改善に期待が持てそうです。
肥満症治療の基本は食事・運動療法ですが、これらをサポートできる治療薬の選択肢が広がることは、肥満症に悩む患者さんの健康増進や生活の質(QOL)の向上を目指すうえで、大きな意味を持つものになるといえるでしょう。