糖尿病は大きく分けて1型糖尿病と2型糖尿病の2つのタイプに分類されます。1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵β細胞が自己免疫等によって破壊され、インスリン注射が必要となるタイプです。一方、2型糖尿病はインスリンの分泌低下や、肥満・運動不足などによるインスリンの効きの悪さ(感受性の低下)が原因となり、主に内服薬などで治療します。多くの方はこのようにお考えではないでしょうか。
しかし、食生活や運動習慣、体重に変化がないにもかかわらず血糖値が上がってしまう方を時々拝見します。その中には、「これまで2型糖尿病といわれていたけれど、実は1型糖尿病だった」というケースが含まれています。
1型糖尿病の中には、発症時は軽度な血糖上昇にとどまり、数年かけてゆっくりとインスリン分泌が低下していく「緩徐進行1型糖尿病」という病型があります。初期は2型糖尿病と診断されて内服治療を行っているものの、次第に薬を増やしたり変更したりしても血糖値が下がらなくなり、検査をするとインスリンを作る力が高度に低下していることが判明するケースが少なくありません。
血糖値が悪化した際に焦ったり不安になったりしないよう、診断の初期段階から自身の病型・病態を正しく把握しておくことが重要です。特に、1型糖尿病に特徴的な「膵島関連自己抗体」を保有している場合は、緩徐進行1型糖尿病である可能性があります。加えて、抗体価の高い方や1)、若年でお痩せになっている方2)は、将来的にインスリン分泌が低下するリスクが高くなります。そのため、残されたβ細胞の機能を守る視点を持ち、将来的なインスリン導入も視野に入れながら慎重に経過を見る必要があります。
また、インスリン導入に至る前の段階においても、一部の経口血糖降下薬(ビグアナイド薬、DPP-4阻害薬)の有用性が新たなステートメントで示されており3)、インスリン分泌能を確認しながらこれらの薬剤を適切に選択することが可能になってきています4)。
当院では引き続き、患者さんの病態を正確に評価し、一人ひとりに適した治療をご提案してまいります。「最近、薬が効きにくくなってきた気がする」など、気になることがあればいつでもご相談ください。
参考文献
1. Nishimura A, et al. Slowly progressive type 1 diabetes mellitus: Current knowledge and future perspectives. Diabetes Metab Syndr Obes. 2019; 12: 2461-2477.
2. Tanaka S, et al. Predictive value of titer of GAD antibodies for further progression of beta cell dysfunction in slowly progressive insulin-dependent (type 1) diabetes (SPIDDM). Diabetol Int. 2015; 7(1): 42-52.
3.島田 朗、ほか.緩徐進行1型糖尿病疑い例への治療介入に関するステートメント. 糖尿病. 2023; 66 (12): 807-814.
4.医薬品の適応外使用に係る保険診療上の取扱いについて(2026年2月25日:厚生労働省保険局医療課長/厚生労働省保険局歯科医療管理官)